睡眠障害の1つである不眠症は、ストレスや生活習慣、全身疾患などが原因としてよくあげられます。噛み合わせとの関連性も指摘されています。さらに睡眠時無呼吸症候群においても、その原因が肥満のみならず、歯並びや顎の位置とか形態などにも関係していることがわかって、耳鼻科と歯科(矯正歯科)との連携医療が行われるようになってきました。
歯並びや噛み合わせが睡眠に及ぼす影響
- 噛み合わせの悪さはストレスになる
不眠症の代表的な原因に精神的なストレスがあります。それは日々の強いストレスによって自律神経のバランスが崩れ、心身が常に緊張した状態になることで引き起こされます。
自律神経には交感神経、副交感神経の2つがあり、交感神経は日中に優位に働き、脳と体が活動しやすいように心拍数や血圧を上げ、血流を活発にします。一方、副交感神経は夕方から夜にかけて優位となり、心拍数や血圧を下げ、体を休めて修復するように働きかけます。
歯並びの悪さによる噛み合わせの微妙なズレは周囲にある神経や筋肉、関節などを常に緊張させ、それがストレスとなって交感神経を持続的に刺激します。つまり噛み合わせの異常が自律神経を乱すことで不眠の原因になってしまうこともあるのです
睡眠時無呼吸症候群と歯並びの関係
睡眠障害である睡眠時無呼吸症候群は、少し前まで肥満の人がなる病気だと考えられていました。しかし最近では痩せている人でもこの病気になることが明らかになり、その原因が歯並びや顎の骨格異常にあることが指摘されています。
- 睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まるなどの呼吸障害が起こる病気です。具体的には、「7時間の夜間睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上あるか、あるいは1時間当たり5回以上の無呼吸があること」と定義づけられています。この状態が長く続くと睡眠の質が悪くなり、その結果、日中に強い眠気が生じ、集中力や判断力が低下してしまいます。
自動車の運転中の事故などがニュースで目立っています。
- 睡眠時無呼吸症候群の原因と噛み合わせ
睡眠時無呼吸症候群の中でも閉塞性無呼吸症候群は、寝ている間に喉や気道が狭まることで起こる呼吸障害です。この呼吸障害が、歯並びや顎の位置や形態にも原因があると言われるようになっています。
歯科においては、下あごが小さい、後ろに下がっている、歯列弓(歯の並びが描く曲線)が狭いなどが、就寝中に喉や気道をふさぐ要因になっていることが分かっています。これは噛み合わせの改善が呼吸を正常にすることにも大きくかかわっていることを示唆します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群における歯科のアプローチとしては、下あごをやや前方に置くように設計されたマウスピースを装着することで、気道を広げ、睡眠中の呼吸を促す効果が期待できます。
何気なく行っている噛むという行為は、食べ物を細かく砕くのみならず、上下の歯が正しく噛み合わさることで心身のバランスを整えることにも大きく関係貢献しています。もし原因の分からない睡眠障害があれば、もしかしたら噛み合わせに原因があるのかもしれません。気になる方は「睡眠外来」などはもちろん、内科(呼吸器・循環器)や耳鼻咽喉科、または矯正歯科に相談するのがよいでしょう。