矯正治療に伴う歯の痛み・不快感や動揺は、歯に力がかかり、移動して矯正効果が出ていることの表れでもありますから、このような不快感をなくすことはできませんし、次第に軽減されてきます。痛みを即止めることは難しいですが、以下のような適切なケアをすることで痛みを和らげることはできます。
1.歯ブラシでマッサージする
痛みを和らげる簡単な方法は、先ず冷やすことです。そして指の腹や、歯ブラシ、電動歯ブラシを使って歯と歯茎の境目や歯茎を優しくマッサージする方法があります。歯の移動に伴う血行障害・炎症が痛みの原因であるといわれていますので痛みの急性症状が弱くなったら、逆に血行を良くすることで痛みを緩和する効果があります。
通常、歯に矯正力をかけると歯の周りには炎症が発生します。それが適切なもの(至適矯正力という)であれば、細胞や組織の修復が始まり大体四週間程度で元の安定した状態に戻ります。
2.内服薬
・痛み止め
装置をつけたばかりで痛みが激しい時期や、どうしても痛みが気になる場合は、痛み止めの薬(鎮痛剤)を使うことで痛みを抑えることもできます。ただし、痛み止めによっては、炎症反応に伴う細胞の修復機能などを抑える成分、つまり歯の移動を止めてしまう成分も含まれていますので、長期間にわたって摂取し続けることは避けたいところです。胃腸障害などの副作用を有するものがありますので、服用に際しては矯正医とご相談ください。
・抗生物質
痛みに直接関与するものではありません。例えば、抜歯の後の痛みの対処法は基本的に痛み止めを飲むしかありませんが、深いところにあった歯を抜いた場合は、抗生物質を飲んで傷が治るまでバイ菌から守ることで痛みや腫れを防いで傷が早く治ることに繋がります。もし抗生物質を出された場合は、必ず出されただけ飲み切りましょう。
3・矯正用ワックス(矯正歯科用粘膜保護材)
矯正装置が口内に当たって痛い場合は、ワックスと呼ばれる粘土状の保護剤で当たる部分を覆うことで痛みを和らげることができます。
ワックスは半透明の粘土で、装置の周りにつけると粘膜に引っかかる摩擦が起きにくくなり、口内炎の原因の刺激と痛みを防ぐことができ、口内炎を予防したり治したりすることができます。矯正歯科治療を行なっている歯科医院で取り扱っているので、担当の先生に適したタイプや使用方法のコツを聞いてみましょう。
ワックスを使用しても痛みが改善しない場合には歯科医院で矯正装置を調整してもらう方法もあります。
4.食べ物を工夫する
矯正装置を付けた直後や、装置を調整した後では、歯の痛みが数日続くことがあるので、そんな時には食べ物を工夫してみましょう。装置に挟まりにくく、柔らかいものであれば、ほぼ大丈夫です。下記は、ほんの一例なので、食べやすいメニューを見つけて、バランス良く栄養が取れるように工夫してみましょう。
・お茶漬けおかゆ、リゾット、グラタン
・柔らかいパン類
・太い麺類(うどん、きしめんなど)
・豆腐料理(麻婆豆腐など)
・卵料理(オムレツなど)
・ひき肉系(ハンバーグ、つみれ、水餃子など)
・煮物
・魚料理
特に、矯正の痛みがピークにある場合には、白米を噛むことも躊躇してしまう場合もあります。そんなときには、スープ系のメニューや、サラダ、フルーツに目を向けてみましょう。痛みがあってもピークを過ぎれば、いつも通り食べられるようになります。下記はあくまで一例です。
・スープ、味噌汁
・サラダ(マッシュポテトやポテトサラダ)
・果物(イチゴ、バナナ、キウイなど)
・デザート(ケーキ、ゼリー、ヨーグルト)
矯正中にはいろいろな原因で痛みが生じる可能性があります。しかし、対処法があるのでそれほど怖がる必要はないでしょう。 また、矯正中の痛みは歯が動いている証拠でもあります。痛みというデメリットばかりに目を向けずに、矯正後のメリットも考えて対応されるとよいでしょう。